はじめに
WEB広告を成功させるために欠かせないのが、「配信前の市場調査」です。
どれだけクリエイティブや運用体制を整えても、そもそも「誰に」「どんな需要に対して」広告を届けるのかを見誤ると、成果は伸びません。広告費を投じる以上、感覚だけではなく、明確な根拠を持って配信戦略を設計することが求められます。本記事では、広告配信前に実施すべき主要な市場調査手法として、
- Dockpitによる競合会社の分析
- Googleキーワードプランナーによる検索需要分析
- サジェスト機能を活用した検索意図の把握
- 広告ライブラリを活用した他社事例調査
の4つを取り上げ、それぞれの調査方法と広告戦略への活かし方を解説します。
Dockpitを活用した競合分析
WEB広告を運用する際、まず押さえておきたいのが、同じ市場の競合企業が「どのチャネルからユーザーを集客しているのか」を把握することです。自社の戦い方を考えるうえで、既に成果が出ている企業の集客構造は非常に参考になります。
そこで役立つのが、Dockpitという分析ツールです。
Dockpitは、国内最大規模のWeb行動ログ(約250万人規模)をもとに、自社・競合・市場(3C)を可視化できるリサーチエンジンです。
競合サイトの流入状況や、ユーザーの検索動向などを、直感的なダッシュボード上で誰でも簡単に分析できます。
本記事では、Dockpitを活用する際に特に汎用性の高い、以下3点のデータの活用法を解説します。
- 流入経路の構成
 ・検索/広告/SNS/外部サイトなど、どこから来ているか
 → 競合が強化しているチャネルや、空いているチャネルを把握する。
- 流入につながっている検索キーワード
 ・競合が流入を獲得している主要キーワードはどれか
 → ユーザーが何を求めているのかを理解する手掛かりとして。
- 特定キーワード検索後の流入先サイト
 ・特定のキーワードで、ユーザーが実際にどのサイトへ流入しているのか
 → キーワード単位で競合となる会社やメディアを把握する。
例えば、ある業界を調査した際に
「競合Aは検索広告による流入が多い一方、競合Bは自然検索の割合が高い」
「検討系キーワードではA社とB社に流入が集中し、自社は比較の土俵に乗れていない」
といった示唆を得ることができます。
これらの情報は、自社にとって
- どのチャネルを伸ばすべきか
- 広告配信時に重視すべきキーワードはどれか
- 比較情報や信頼の訴求を追加すべきか
といった改善や設計の判断に役立ちます。
なおDockpitでは、ここで紹介した指標以外にも多様な分析が可能ですが、まずはこの3つを押さえることで市場における自社の立ち位置を理解し、無駄のない広告運用に繋げることができます。
Googleキーワードプランナーを活用した検索需要分析
検索広告(リスティング広告)は、ユーザーの「明確なニーズ」が顕在化したタイミングにアプローチできる点が強みです。しかし、そもそも検索されていないキーワードを選んでしまうと広告は表示されません。そのため、検索広告を検討する際には事前に検索需要の有無を精査することが欠かせません。
そこで活用するのが Googleキーワードプランナー です。ここでは特定のキーワードのデータを確認でき、主に次の3つの指標を解説します。
- 月間検索ボリューム(検索需要の大きさ)
 → 広告を配信できるだけの市場が存在するか判断できる。
- 競合性の指標
 → 同じキーワードで出稿している競合の多さ、取り合いの激しさがわかる。
- 推定クリック単価(CPC)
 → 投資金額の適正値や、獲得単価の目安を把握。
これにより、
「ボリュームは大きいが競争が激しく単価が高いキーワード」
「検索数は少ないが費用対効果が高いキーワード」
などの特性を整理し、限られた予算の中で成果を高めやすいキーワードの選択が可能になります。複数のキーワードを比較していくことで、自社が狙うべきキーワードを精査することができます。
リスティング広告を行う場合には、ここでの市場調査が広告成果に大きく影響してきます。感覚で決めてしまうより、確かな根拠を持ったキーワード選定を行うことが重要です。
サジェスト機能を活用した検索意図の把握
検索キーワードには、ユーザーが抱える疑問や課題、目的がそのまま表れます。特に、検索窓に入力した際に表示される サジェスト(予測変換)キーワード は、ユーザーが実際に多く検索している言葉であり、リアルなニーズを把握する手掛かりになります。
ここで確認するサジェストとは、Google, Yahoo!, Microsoft Bingの予測変換と、検索結果画面下部に表示されている関連検索キーワードになります。
これらを調査することで、
- ユーザーが知りたい情報は何か
- どのフェーズで情報収集しているのか
- どのような比較軸を意識しているのか
といった「検索意図(インテント)」を読み解くことができます。
例えば、
「サービス名+評判」
「商材名+比較」
「商品カテゴリ+おすすめ」
などがサジェストに多い場合、ユーザーは既に検討段階に入っており、
具体的な不安や判断材料を求めている と推測できます。
一方、
「使い方」「とは」「メリット」といったワードが多い場合は、
まだ認知・理解の段階 にあり、教育的なコンテンツの強化が効果的です。
このようにサジェスト調査は、
- LPの見出しや構成にユーザーニーズを反映
- 広告文の訴求やキーワード選定に活用
- FAQや比較情報など、離脱防止の要素強化
といった広告配信の方向性を定めるために行います。
特にリスティング広告を配信する場合は、キーワードの「量」だけでなく「背景にある心理」を理解することで、よりユーザーに寄り添ったアプローチが可能になります。
広告ライブラリを活用した他社事例調査
競合分析や検索分析によって、どのチャネルでどのユーザーに届けるべきかが見えてきたら、次に確認したいのが 実際にどのような広告クリエイティブが成果に繋がっているか です。その際に活用できるのが、各プラットフォームが公開している広告ライブラリです。
代表的な例としては以下があります。
- Meta広告ライブラリ(Facebook / Instagram)
- Google広告透明性センター
- TikTok Creative Center など
これらを調べることで、
- どんなバナー/動画が使われているか
- どんなキャッチコピーや訴求表現が多いか
- どの市場や商材が広告を活発に配信しているか
といった情報が取得できます。
特に注視したいポイントは次の3つです。
- 視覚的トレンド(デザイン/色調/構図)
 → ユーザーの目を止めるクリエイティブの傾向が把握できる。
- 訴求内容(ベネフィット/根拠付け/共感要素)
 → どのような訴求が刺さっているのかを把握できる。
- 導線設計(LPの構造/CTA配置/権威性の提示)
 → 獲得率最大化のための型を学べる。
もちろん他社の広告をそのまま模倣するのはNGですが、市場で勝っているパターンを学び、自社の強みへ置き換える ことはとても有効です。
これまでの調査結果とも照らし合わせることで、ユーザーが求めている情報を、最適な形で届けるヒント が得られます。広告は短期間でトレンドが変化するものですが、広告ライブラリは「今どんな表現がユーザーに受け入れられているか」を把握できる便利な情報源になります。定期的に確認しておくことで、運用改善にも大きく生かすことができるでしょう。
実際に調査データを活用した広告運用例
ここまで紹介した市場調査を、実際にどのように広告運用へ活かすのか。ここでは分析結果を踏まえた検討プロセスを紹介します。
まず最初に確認したいのが、競合が広告経由でどれくらい流入を獲得しているかです。
Dockpitを用い、競合サイトの流入から、広告由来の割合や媒体別の内訳(検索/ディスプレイ/SNS)を確認します。これにより
- 市場で広告が効いているのか
- 自社の媒体選定が合っているか
- 競合が弱い媒体はどこか
といった仮説検証ができます。
Dockpitでの分析は、広告を検討する際に自身の媒体選定の仮説が合っているかどうかの答え合わせをするイメージで活用します。
検索広告を行う際に大事なのは予算と市場(検索需要)のバランスです。
キーワードプランナーでは、検索ボリュームや競合性、想定クリック単価を確認し、限られた予算で最も効果的な配信を行うための目安を立てます。
どのキーワードから広告を出していくかの優先順位を付ける意味で活用することが多いです。
次に各媒体でサジェストを確認し、キーワード単位での検索意図を確認します。
複数の検索意図を分類し、それぞれに対応した訴求軸へ落とし込む。という使い方が基本です。
市場状況や予算に応じて2〜3つ程度ピックアップし、広告セット別に展開していくという方法です。
検索意図とクリエイティブの粒度を揃えることで広告効果を最大限高めることができます。
最後に、広告ライブラリを確認し「市場で勝っているパターン」を探します。
見るべきポイントは主に二つです。
1.バナーの構成
- どんな写真/イラストが多い?
- 文字量は?縦長?横長?
- 色調や表現トーンは?
→ クリック率を左右するトレンドを把握
2.導線とLP構成
- LPに飛ばす?SNSページ?記事LP?
- CTAの置き方は?
- 権威性(実績・第三者評価)の使われ方は?
→ CVにつながる導線の研究
ここで得たパターンを、自社の強みに置き換えていく流れです。ポイントは模倣ではなく転用にあることを忘れないでください。
まとめ
市場調査は、WEB広告の成果を左右する重要なプロセスです。
Dockpitで広告市場の全体像を掴み、キーワードプランナーで配信ボリュームを想定し、サジェストでユーザーの検索意図を理解し、広告ライブラリで効果的な表現のヒントを得る。
この一連の流れを踏むことで、感覚ではなく根拠を持った広告設計が可能になります。小さな調査の積み重ねが、運用効率の改善や無駄な配信の削減につながります。
今回ご紹介した市場調査を、ぜひ自社の広告運用にも取り入れてみてください。
 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							 
							